真夏に車で遠出をしていて、途中で食べ物を買おうとした。冷凍のものと、冷蔵のもの。

今の時期、買ったものを車に積んでちょっと離れたら、一瞬で溶ける。それくらい暑い。

家にはキャプテンスタッグの保冷ケースがある。保冷剤を入れておけばとんでもなく冷えるやつで、冷凍品も冷凍のまま、冷蔵品はむしろキンキンになるくらいの性能がある。ただ、これを毎回車に積んでおくということができていない。何が起きるか分からないから、いちいち積まない。

そこで思ったのが、シガーソケットから給電して冷やしてくれるものはないのか、ということだった。しかもうちの車、後ろ側にシガーソケットがある。あそこ、こういう用途以外で使うことある?

方式は実質ひとつしかない

調べると、車で使う「冷やす系」は大きく2種類ある。

ペルチェ式(電子冷却) は安くて軽い。前開きドアのものも多い。ただし冷却力は「外気温マイナス15〜20℃」程度しかなく、外気温35℃を超える夏場は庫内20℃くらいにしかならないとされている。真夏の車内はもっと暑いので、実質ぬるいクーラーボックス以下になる。冷凍品は論外。

コンプレッサー式 は家庭用の冷蔵庫と同じ仕組みで、-20℃前後まで下がる。外気温にも左右されにくい。やりたいことを考えると、選択肢はこっちしかなかった。

「横開き」という壁

うちの車は後ろの収納を2段にしているので、上開き(縦開き)だと上段が邪魔で開けられない。横開きが欲しい。

ここで最初の壁にぶつかった。この手の製品には、紛らわしい2つの表記がある。

  • 両開き「フタ」 … 上開き。左右どちらからでもフタが開くだけで、開口は天面
  • 両開き「ドア」 … 前開き

「縦型ポータブル冷蔵庫」というジャンル名で探すと近いものが出てくるのだが、縦型を名乗っていても上開きのものが大量に混ざっている。スペック表には開き方向が書かれていないことも多く、結局は商品画像でヒンジの位置を見るしかない。

ちなみに「上開きを買って横に倒せばいい」は通用しない。コンプレッサーには傾斜の許容範囲(多くは45度まで)があって、横倒し常用は故障につながる。

さらに、扉の向きをクリアしても放熱スペースの問題が残る。コンプレッサーとコンデンサーは本体の底面・背面にあって、そこから熱を捨てている。棚に隙間なく押し込むと冷えないか、負荷がかかって寿命が縮む。

リチウム電池は要らない

多くのモデルが専用バッテリーに対応していて、レビュー記事はだいたい「バッテリー付きがおすすめ」と書いている。

でもこれは車中泊を前提にした評価軸だと思う。積みっぱなしにしたい私の場合は逆で、電池は無いほうがいい。

  • 夏の車内は50〜60℃を超えることがある。この環境でいちばん危ないのは電池で、45℃を超えると膨張が始まり、さらに高温になると発火・破裂のリスクがあるとされている
  • 電池がなければエンジンオフで確実に止まる。駐車中に勝手に動いてバッテリーを吸う心配がない

欲しかったのは「走っていると勝手に冷える環境」

要件を整理するとこうなった。

  • 最初から冷えている必要はない。保冷剤を用意できるならそもそも困っていない
  • 走り出して15分くらいで、外気温より下がっていってくれればいい
  • 買い物を終えて戻ってきて、また走れば冷えていく
  • 駐車1時間くらいなら温度を保ってほしい
  • 車内が50℃になることの影響を受けにくいこと

準備という行為が発生しないのが大事なところで、そこを解決したかった。

工夫として思いついたのが、小さめの保冷剤を1〜2個、庫内に入れっぱなしにしておくというもの。走行中に冷蔵庫が勝手に凍らせてくれるので、準備がいらない。電源が切れた駐車中は、その保冷剤が蓄冷体として庫内を支えてくれる。保冷剤を凍らせる工程を冷蔵庫に肩代わりさせる形になる。

候補まではたどり着いた

条件を「コンプレッサー式・リチウム電池なし・ちゃんとしたメーカー」で絞ると、候補はかなり減る。この分野は中国系ブランドがほぼ席巻していて、有名メーカーで探すと選択肢が一気に消える。

そのなかで候補になったのが PowerArQ の ICEBERG 12L(型番 N12)だった。

項目仕様
冷却方式コンプレッサー式
温度範囲-20℃〜10℃
消費電力MAXモード 45W / ECOモード 35W
電源AC100V / DC12V・24V
サイズ388 × 248 × 447mm
重量約8.28kg
価格27,500円(公式ストア・単品)

バッテリーは別売の外付けなので、単品を買えば電池ゼロ。加島商事という日本の会社の製品で、修理サービスや整備済み品の販売、下取りまである。消費電力35〜45Wはシガーソケットの120W枠に対して余裕がある。奥行248mmという細さも、2段収納に入れる前提だとありがたい。

ここまでは良かった。

損益分岐点に気づいた

冷却速度の目安は「室内温度25℃・庫内が空の状態で最低温度まで約20分」となっている。ただしこれは25℃スタートの数字だ。

50℃まで熱を吸った箱を冷やすというのは、庫内の空気だけでなく断熱材や内壁そのものを冷やす作業になる。45Wでは10分や20分ではまるで足りない。

つまり、スーパーまで10分の日には何の意味もない。20分でも意味がない。片道30分以上、できれば1時間以上運転する日でないと機能しない道具ということになる。

そこで、自分の運転を2つのパターンに分けて考えてみた。

1時間以上の遠出をする日は、事前に分かっている。大きなイベントとして予定が立っているので、出発前に保冷剤を積むという発想が自然に生まれる。ここは冷蔵庫がなくても成立する。

10〜20分で行ける近所は逆で、うろちょろしているうちに急に買い物を思いつくパターンなので、保冷剤を積むという発想がそもそも出てこない。ここは確かに困る。ただ、20分あれば家に着く。多少溶けても、そこまでのダメージにはならない。セーフの範囲。

整理してみると、冷蔵庫が本当に必要なのは「長時間走るのに保冷剤を積み忘れた日」だけだった。そして長時間走る日は事前に分かっている日なので、その積み忘れ自体がほとんど起きない。

活躍する場面が、ほぼ存在しない。

27,500円と、常時8kgをラゲッジに置き続けることと、いつか売るか捨てる手間。それを「ほぼ存在しない場面」のために払うのか、という話になった。

買わないことにした

私は前から、100回欲しいと思っても99回買わずに済ませて何も困らない、2週間もすれば欲しかったこと自体を忘れる、という感覚を持っている。今回はけっこう99回側だった。

やらなければいけない家事があるのは、余計な物を買ったからだと思っている。物を買えばいつか捨てるか売る手間が発生する。だからそもそも買わないのが正解、というのが基本方針で、今回もそこに落ち着いた。

保冷バッグを畳んでラゲッジに入れっぱなしにしておいて、必要なときにその場で氷を買う。場所を取らず、電源も放熱も故障も考えなくていい。今回の困りごとを解く最小コストはこれだった。

調べた時間が無駄だったかというと、そんなことはないと思っている。「買わない」に到達するにも、ちゃんと調べないと到達できない。