葛飾区の戸建てに住んでしばらく経つ。ある夏、家の中にアリが大量発生した。一度に50匹くらい。キッチンで見て、別の日には風呂場でも見た。
決して超がつくような田舎ではない。普通の住宅街だ。それでも虫はよく出る。
入居してから毎年何かしらの虫と戦っている。この年はアリの番だった。せっかくなので、これまでの経緯と今わかっていることを書いておく。
最初は欠陥住宅を疑った
よく見ると、アリは壁の中から出てきていた。床でも窓でもなく、壁だ。
築浅でこれはおかしいのではないか、と最初は思った。施工会社とは過去に二度、後味の悪いやり取りをしている。今回もスムーズにはいかないだろうと身構えた。
一度目:約束の日に担当者が来なかった
物件のオプションについて問い合わせ、担当者に来てもらう日を決めた。
その日、担当者は来なかった。
結局そのオプションは別の会社に依頼することになった。
二度目:外壁の穴を「家の建て直しが必要」と言われた
太陽光パネルを設置した際、施工業者に外壁へ穴を開けられた。
相談に乗ってくれたのは東京電力の一級建築士の方だった。この穴は塞げる、技術的に可能だという見解だった。その見解を添えて施工会社に問い合わせたところ、返ってきた回答は「家の建て直しが必要」だった。
穴をひとつ塞ぐ話が、どうして家を建て直す話になるのか分からなかった。当然、直してはもらえない。
最終的には東京電力の方が別の業者を探してきてくれて、問題なく修理は完了した。塞げる穴だったということだ。
この2件があったので、今回も「まともに取り合ってもらえないだろう」というのが率直な予想だった。
それでも制度は調べた
調べたところ、新築住宅は引渡しから10年間、住宅瑕疵担保責任保険の対象になる。雨水の浸入や構造上主要な部分に問題があれば、施工会社に無償補修を請求できる。施工会社が動かない場合でも、保険法人に直接請求できる仕組みがあるし、住まいるダイヤル(0570-016-100)では建築士や弁護士の相談が無料で受けられる。紛争処理の申立ても手数料1万円で済む。
準備としてはそこまで調べた。が、結論から言うと、この線は追わなかった。
湿気がなかったので、構造の問題ではなさそうだった
判断の分かれ目は湿気だった。
アリが壁内に営巣する場合、雨漏りや配管の水漏れで壁の中が湿っていることが多い。逆に言えば、湿気の兆候があれば施工不良を疑う根拠になる。
侵入箇所の周辺を触ってみたが、湿っていなかった。床がきしむこともない。変色やカビ臭さもない。
そもそも、住宅には配管の貫通部、サッシ周り、幅木の裏、コンセントボックスなど、構造上どうしても数ミリの隙間がいくつも存在する。これは施工不良ではなく普通のことだ。体長2〜3mmのアリはそこを通る。
侵入経路が複数あることも、外から複数箇所を突破されているというより、壁内の巣が複数の出口を使っているだけと考えたほうが自然だった。出口が複数あるのは巣が中にある証拠であって、施工の証拠ではない。
というわけで、これは害虫の問題として処理することにした。
元々畑だった土地に建っている
もうひとつ、後から思い当たったことがある。この家は、元々畑だったところに建っている。
元農地は虫にとって条件が揃っている。土壌に有機物が多く、土壌生物が豊富で、アリの餌にも営巣場所にもなる。造成前から住んでいたアリやムカデのコロニーが、家が建ってもすぐには消えない。周辺にも農地や空き地が残っていれば、駆除しても外から補充される。
毎年違う虫が出続けている理由はこれで説明がつく気がする。土地由来の供給圧が常にかかっている状態だ。
これは施工の問題ではなく、立地の問題だ。元畑に建てたこと自体は誰の責任でもない。
入居してからの虫の推移
記録として残しておく。
1年目 — ゴキブリが大量に出た。屋外用の毒餌を設置したところ、夏の間に6匹の死骸を屋外で確認。ムカデとゲジゲジもそれなりに出た。
2年目 — ゴキブリはさらに多く駆除できた。死骸は10匹。ムカデ・ゲジゲジは1年目より減った。
3年目 — ゴキブリの死骸は1匹だけ。代わりにアリが大量発生した。
ゴキブリが減ってアリが増えたので、因果関係があるのではないかと考えた。実際、アリはゴキブリの卵鞘や幼虫を襲うので、競合関係自体は存在する。
ただ、家庭レベルでそこまで効くかというと疑わしい。それに、屋外で見つかる死骸は全体のごく一部でしかない。多くは見えない場所で死ぬので、死骸の数は「駆除できた数」ではなく「たまたま目に入った数」だ。年ごとの比較には向かない指標である。
素直に解釈するなら、数年叩き続けた結果ゴキブリの個体群が実際に減り、アリは土壌由来の個体群がたまたま条件に恵まれた、という別々の現象がたまたま同じ年に重なっただけだろう。
もしアリを一掃した後にゴキブリが戻ってくるなら競合説が支持される。戻ってこなければ、単にゴキブリが減っていただけということになる。来年わかるかもしれない。
やったこと、効いたこと、失敗したこと
失敗:ゴキジェットで一掃した
あまりにも数が多かったので、一度スプレーで全部殺した。
これは正しくない対処だった。目の前の個体は減るが、巣は無事なので復活する。しかも忌避成分が残るせいでアリが近寄らなくなり、その後に置いた毒餌が食べられなくなる。列も乱れるので、巣の場所を追跡する手がかりも失う。
種類によっては巣が分散して被害が広がることもあるらしい。50匹目の前にいたらスプレーを掴む気持ちはわかるが、おすすめはしない。
効いたこと:毒餌
使ったのはこのあたり。
- アース ガーデン ハイパーアリの巣コロリ(043511)
- スーパーアリの巣コロリ
どちらもフィプロニル系の遅効性で、働きアリが巣に持ち帰って女王や幼虫に分配されることで効く設計になっている。
注意点として、どちらも屋外向けの製品だ。屋内に置くなら屋内用を別に用意したほうがいい。猫がいる家なら特に。
屋外に置いたものは一瞬で空になった。ベイトは「置いてある」ことより「食べられ続けている」ことが効く条件なので、空になったら補充する。消費が落ちてきたら効いてきたサインだ。
なお、屋外の毒餌はゴキブリやナメクジ、ダンゴムシに食べられている可能性もある。設置後30分ほどで見に行くと、何が来ているかわかる。
現状
トイレ横の隙間に毒餌を追加したところ、翌日に周辺で10匹ほど死んでいた。以降、アリは見ていない。
ただ、遅効性の毒餌としてはこの死に方は早い。摂取量が多い個体が巣に帰る前に力尽きた可能性がある。つまり、その分は巣に届いていない。
姿を見なくなっただけでは、巣が弱ったのか、採餌部隊が減っただけなのか、スプレーを避けて別ルートに移ったのかは区別できない。判断材料は毒餌の消費量のほうだ。
8月はまだ活動期なので、9月頃までは毒餌を置いたまま様子を見るつもりでいる。
意外だったこと:屋内に入ってくるのはアリだけ
今回いろいろ確認して気づいたのだが、屋外ではムカデ、ゲジゲジ、ナメクジ、ダンゴムシ、トビムシと一通り見ている。元畑というだけあって虫は豊富だ。
しかし、家の中に入ってきているのはアリだけだった。
これは悪くない状況だと思っている。敷地に虫がいることと、家の中に虫が入ることは別の問題だ。前者は土地の条件なのでどうしようもないが、後者はコントロールできる。実際、アリ以外は外で止まっている。
ちなみにダンゴムシとトビムシは特に気にしなくていいらしい。人を刺さないし、家も傷めないし、食品も荒らさない。トビムシはむしろ土壌が健康な証拠だそうだ。大量に屋内に入ってきたら湿気のサインなので、その時だけ気にすればいい。
これからやること
毒餌はアリ・ゴキブリ・ムカデとも今後も続ける。ただ、種類ごとに個別対応していると手間もコストも積み上がる一方なので、種類を問わず効く対策を足していくつもりだ。
侵入口の物理封鎖 — 配管の貫通部、サッシ周り、換気口、床下換気口の防虫網、基礎と土台の隙間。コーキングや防虫キャップで塞ぐ。一度やれば数年もつ。
建物外周の環境整備 — 建物際の雑草、落ち葉、鉢植え、木材の直置きをなくす。土壌の虫が家に取り付く足場を減らす。どのみち庭の手入れとしてやることでもある。
床下の確認 — 元畑で地面からの湿気が上がりやすい可能性があるので、点検口から一度状態を見ておきたい。小さいムカデが結構出るのも、床下や基礎周りに供給源があるサインかもしれない。
淘汰はたぶんできない
正直なところ、根絶は無理だと思っている。周辺の土壌には常に予備軍がいるし、隣地からも供給される。地面がある限り虫は湧く。
なので目標は「敷地から虫を消す」ではなく「屋内に入れない」に置いている。こちらは達成可能だし、アリ以外については既にできている。
毎年何かと格闘している感覚は疲れるが、屋外ベイトの補充を季節作業として定着させ、封鎖を一度きちんとやってしまえば、そのうち「季節のメンテナンス」くらいの位置づけになるはずだ。屋内に入られた時だけ集中対応する、という運用が現実的な落としどころだろう。
これは長期戦になる。来年の夏、アリがまた出たのか、それとも別の虫が主役になったのか、ゴキブリが戻ってきたのか。続きはまた書きます。